下肢閉塞性動脈硬化症
●下肢閉塞性動脈硬化症
末梢血管の中でも、手足の動脈の病気は統計学的に70歳代で10%、80歳代で20%、90歳代では30%の方が発症していることがわかっています。
中でも頻度の多いものに足の動脈の病気(下肢閉塞性動脈硬化症)が挙げられます。
足の動脈の動脈硬化が進行し、血管が狭くなったり詰まった結果、足の先に流れる血流が不足し、それによって足の冷え、しびれや痛みを伴い休みながらでないと長い距離を歩けない(間欠性跛行)が起きます。
高血圧、脂質異常症、糖尿病、慢性腎症の患者様で足の症状(長い距離が歩けない、足のしびれ、足の冷え、足指の色の変化、足指の傷など)があり、ABI(Ankle-brachial index:血圧脈波検査)という手足の血圧を測る検査で0.9以下であれば下肢閉塞性動脈硬化症の可能性が高いと考えられます。
とりわけ糖尿病や腎不全末期の患者様では、足指の傷や腐ってしまう(壊疽)を生じる場合があり、最悪足や足指の切断に至る結果となり著しく日常生活が損なわれます。
とりわけ治療に難渋するのが皮膚病変を伴う足の閉塞性動脈硬化症となります。
治りにくい傷(潰瘍)の原因と種類には様々な病気があります。具体的には動脈性(虚血性)潰瘍、糖尿病性潰瘍、静脈性(うっ滞性)潰瘍、膠原病など免疫疾患による傷(潰瘍)など原因はさまざまです。当センターではまず治りにくい傷(難治性潰瘍)の原因を調べ、診断を行います。原因の特定は治療方針決定や治療後の再発防止のために大変重要です。
なかでも足の動脈の血流障害が足の傷の原因である場合は、足の血流を良くするが必須となります。治療の遅れから足の切断に至る可能性もあり、できるだけ早く診断・治療を行うことが重要と思われ、重症の方では受診日当日に足の血管造影CTや血管超音波検査などの評価を行うよう心がけております。治療により血流が良くなれば、適切な傷の処置を行うことにより足の切断が回避できることがあります。内科的なカテーテル治療と外科的なバイパス術を必要とした例は2021年1月から2022年12月の期間にそれぞれ40例、14例でした。末梢血管センターでは、循環器内科、心臓血管外科、皮膚科、形成外科、放射線科、腎臓内科、整形外科などの専門家が集まり、一人一人の患者さんに適した治療方針を決めていきます。足の傷が治らない、足の色が悪い、しびれるなど軽微な症状であってもお気軽にご相談いただければと思います。