薬務部の紹介
薬務部の紹介
薬務部では、幅広い業務に対応し、年々高度化、多様化する薬物療法の有効性と安全性の確保に努めています。調剤支援システムの積極的な導入と同時に、能動的な薬学的介入を行い、薬剤師の職能を活かしたチーム医療の一員としての責務を果たしています。また、薬務部の理念である「最適の薬物療法と患者ケアを提供できる」よう薬務部全体で自己研鑽に励んでいます。新人教育にも注力し、1年間のきめ細やかな指導と着実に成長できる教育研修体制を整え、最適な薬物療法や患者ケアを提供できる臨床能力向上に努めています。
地域に根ざした自治体病院として、地域の医療機関や介護施設等と連携を図り、そして急性期病院として良質で安全な医療を提供しています。
薬務部員数:38名(嘱託職員1名、産休・育休を含む)、令和4年4月現在
<薬務部 理念>
最適の薬物療法と患者ケアを提供できるよう最善の努力をします
<基本方針>
■信頼される薬剤師として、患者中心の安全・安心な医療を提供します。
■専門性を活かし、他部署との連携・相互理解を図りチーム医療に貢献します。
■薬薬連携に努め、患者の健康支援をめざします。
■業務上の無駄をなくし、経営の効率化を図ります。
■多様化する時代を見据え、常に良質な医療を提供できるよう自己研鑽に努めます。
1.調剤室
調剤業務は、薬務部員全体で取り組み、全自動錠剤分包機の効率的な使用や散薬・水薬監査システムの活用でヒューマンエラーを防いでいます。処方オーダリングシステムを導入しており、併用禁忌薬、薬物相互作用等についてチェックをしています。
患者さんに安心してお薬を服用していただけるように各種監査システムを使用し、調剤過誤防止に努めています。医師の処方のもと、患者さんの服用状況に応じて錠剤の粉砕やお薬の一包化なども行っています。
広域抗菌薬・抗MRSA薬の運用
広域抗菌薬・抗MRSA薬に対して、薬務部では初回投与前に電子カルテ上で医師が入力した使用申請書と細菌学的検査(血液培養や痰培養など)の提出を必須とした「届出制」と、バンコマイシン、リネゾリド及びダプトマイシンに対しては、さらにICTの許可が必要な「許可制」の体制下で、薬剤の払出しを行っています。また、抗MRSA薬に対して、薬剤師が全例TDM解析による適正なモニタリングと提案を医師に行っています。
手術室薬品管理業務
筋弛緩薬などの毒薬と麻薬は薬剤師が管理しています。医師、看護師が、手術室に持ち込めるように使用する薬剤を1トレイにセット化し、使用されたバイアル、アンプルの充填及びコスト入力チュックを行っています。
2.注射室
注射室では、注射薬自動払出システムを使用し、24時間、1施用毎に調剤しています。処方箋の内容から、用量・用法・配合変化等の確認を行います。機械から払い出された薬剤を確認し、処方内容の薬剤を揃えていきます。その後、監査を行い病棟に払い出しています。注射薬は、薬剤充填、輸液などの取り揃え、病棟搬送などは、薬剤師の管理・指導の下で調剤補助者にタスクシフトを図っています。
3.製剤室
治療上、必要ではあるが市販されていない薬剤などについて、専門知識を活かしてクリーンルームで無菌製剤などの院内製剤の調製を行なっています。高カロリー輸液(TPN)混合調製業務は、配合変化データに基づき可能な範囲で、土日祝使用分を含めた全日に対してクリーンルームで調製しています。
4.薬品管理室(DI室)
医薬品に関する情報を収集・保管し、院内スタッフや患者様に対して迅速に情報提供を行っています。薬品情報の適切な管理を目的に業務を行なっています。薬物療法のべネフィット・リスクバランスの最適化に貢献する病院薬剤師として専門性を発揮するために、必要なエビデンスを支える情報を取り扱う業務です。薬剤師業務の中心が「もの」から「人」へと変化する中で、病棟での薬剤師が担う業務は、薬剤管理指導や病棟薬剤業務実施加算だけに限らず、さらに様々なチーム医療における医師との協働をはじめとして医療における薬剤師の役割が格段に広がり、DI(Drug Information)業務の役割・位置づけも大きく変化しました。
具体的に、医薬品の情報管理、院内のスタッフからの医薬品の問い合わせ、院内の医薬品採用に関わる業務(薬事委員会の運営も含む)、院内スタッフへの情報提供(DI News発行など)を行なっています。
保険薬局からの疑義照会に対しては、プロトコールを作成し、簡素化に努めています。院外処方箋に関しても、取り決めた検査値結果を掲載することで、保険薬局の薬剤師に対して情報を提供する取り組みを行いました。また、保険薬局が提出するトレーシングレポートの窓口として薬品情報管理室が対応し、必要度合いに応じて主治医への連絡を適切に行なっています。
薬剤管理指導料や病棟薬剤業務実施加算の算定要件には、DI室と常勤薬剤師2名以上の配置が求められていますが、最近では院内での情報の発信ニーズが高まり、病棟担当薬剤師との協働・連携だけではなく、薬務部全体で取り組むべき業務と考えています。
5.薬品管理室
病院内で使用される医薬品の購入と供給・管理を行う部署となります。薬品卸売販売業者から医薬品を購入し、適正な在庫管理・品質管理を行い、病院内の需要に対して医薬品を迅速に供給します。製造番号、使用期限などを含めた管理体制を構築し、品質を保持するために各医薬品に適正な温度、湿度、遮光管理を行いながら適正な在庫管理しています。特に麻薬、毒薬、向精神薬は、法律に定められた厳重な管理を行い、特定生物由来製品(血液製剤など)についても製造番号等の必要情報を定められた期間保管しています。さらに、病棟・外来の定数薬品管理の役割も担っています。メーカーから品質に関する自主回収などの報告があった場合は、速やかに回収・他部署への連絡等を行います。医薬品購入費は多額であり、病院にとって過剰在庫とならないように、必要最小限に管理しますが、緊急時や大規模災害時の必要薬は、当院の使命を考慮して適正な在庫管理を行います。最近では、医薬品の安定供給に対する不安が大きく、院内や院外に対する医薬品の需要に対する医薬品選定の検討についても、薬品情報管理室(DI室)と情報共有しながら、医薬品供給体制強化に努めています。
6.病棟薬剤室
入院患者様の持参薬確認、内服・注射処方に対しては、検査データなどを利用した処方チェックの結果をもとに、医師へ処方提案や情報提供を行っています。薬剤管理指導業務として、服薬指導、薬歴管理、副作用の確認なども行っています。
病棟業務・薬剤管理指導業務
当院は病棟薬剤業務実施加算を算定しており、ICUを含む全13病棟に専任薬剤師を配置しています。2病棟3名体制を基本とし、休暇などで人員不足となる病棟のフォローを行っています。
入院時面談と持参薬の確認
全入院患者に対し、入院日当日(休日入院であれば休日明け)に初回面談を実施し、持参薬確認を行っています。緊急入院で持参薬の詳細な情報が無い場合は、かかりつけ医や保険薬局へ薬剤師が問い合わせを行い、薬の情報を入手しています。入退院センターで得られた情報や、患者・家族への聴取から、薬の自己管理が可能かどうか薬剤師として判断した上で、看護師と協議して入院中の管理方法を決定しています。持参薬が看護師管理となる場合は、薬袋が施設や保険薬局によって様式が異なるため、「院内統一の薬袋」を薬剤師が作成し、持参薬の薬袋見間違いによる配薬間違いの防止に貢献しています。
電子カルテの持参薬オーダーと服薬実施記録システム
当院の電子カルテシステムには持参薬オーダー、服薬実施記録の機能があり、最大限に活用しています。薬剤師は入院時、持参薬鑑別時に鑑別システムへ残数入力を行います。医師は電子カルテで持参薬の継続・中止指示を行い、持参薬オーダーを発行させます。看護師は、持参薬、院内処方薬ともに、薬剤毎・服薬時間毎に服薬実施記録を実施します。この一連の流れを行うことで、電子カルテの服薬実施画面上で持参薬、院内処方の服薬状況や中止を含む薬歴の全ての情報を網羅できるようになっています。
処方内容の確認と薬学的介入
薬剤師が定期処方の確認・依頼を行っています。薬剤管理が看護師管理の場合は、配薬間違いを防ぐために定期処方は原則一包化としています。病棟業務支援システムでは、期間を指定して処方切れの一覧表を出力することができ、それを利用して臨時処方や持参薬切れの継続薬の確認・依頼を行っています。その際、前述した服薬実施画面や検査値、患者聴取により得た情報をもとに、処方継続の検討、薬剤変更や追加、減薬等の提案を行い、患者個々に応じた薬剤の適正使用・治療向上に努めています。当院非採用の持参薬が無くなる場合は、持参薬の服薬歴や既往歴を考慮して、代替薬の提案を行っています。
薬剤管理指導と退院指導
薬剤管理指導の記録はテンプレートを使用して、業務の効率化を図っています。また、ハイリスク薬の記録についてもチェックリストを中心としたテンプレートを作成しており、患者説明や指導管理内容の統一化に繋げています。退院指導では、お薬手帳ラベルを配布し、入院中の使用薬剤の経過や特記すべき事項があれば必要に応じて追加記載し、医療機関へ情報提供を行っています。
その他の病棟業務
定数配置薬、救急カートは毎週1回、正しく配置されているか確認をしています。また、4カ月に1回期限チェックを行い、期限切迫薬は回収し、使用頻度の高い部署に配置するなど薬品管理担当と連携をとり、期限切れによる廃棄薬品の削減に努めています。
DI服薬カンファレンス
毎週1回、病棟担当者とDI業務担当者でカンファレンスを行っています。病棟業務の問題点を検討し、医薬品の適正使用や流通に関する情報等をスタッフ全員で共有したり、症例検討を行う貴重な時間となっています。
入退院センター業務
患者総合支援センターに入退院センターが設置されており、外来受診時に入院が決定すれば、診察後に薬剤師が面談を行い、医療機関から処方されている薬の内容を確認します。併せて、服薬管理状況の確認、薬剤アレルギーの有無、手術目的の入院では休薬薬剤の指示確認、説明を行います。患者説明用文書を渡し、休薬薬剤が一包化されている場合は、説明用文書をかかりつけ薬局に持参して除薬の相談をしてもらうように伝え、保険薬局との連携を図っています。情報記録については、お薬手帳や薬剤情報提供書の画像を電子カルテ上に添付し、確認事項は電子カルテに記載しています。
入院前面談で得た情報を元に、入院時に病棟担当が初回面談と持参薬鑑別を行うので、入院前~入院時の薬剤情報に関する効率的な流れが確立しています
化学療法業務
抗がん剤調製
土日祝を含め、入院・外来患者の抗がん剤調製を薬務部内の安全キャビネットで行っています。全ての殺細胞性抗がん剤を対象に閉鎖式薬物移送システム(ネオシールド®)を使用し、調製者はもちろん、投与を行う医療者にとっても、より安心・安全な環境で化学療法が行えます。
外来化学療法患者指導
令和3年4月より、がん患者指導管理料ハ及び連携充実加算を算定しています。
10名の薬剤師が兼務で担当し、レジメン監査により適正な投与量、投与スケジュールを確認し、全ての患者指導を外来化学療法室で行っています。またそこで得られた情報を医師にフィードバックし、より安全で効果的な化学療法を患者に提供できるように業務に取り組んでいます。
チーム医療
以下に示した医療チームに薬剤師がメンバーとして参画し、他の職種とともにラウンドやカンファレンスに参加し、より安全で効果的な薬物療法の提供、治療や療養の質の向上に貢献しています。また、チームメンバーとして、院内研修会の立案・講義なども行い、院内スタッフへの教育・情報提供にも携わっています。栄養サポートチーム(NST)、緩和ケアチーム、感染対策チーム(ICT)、抗菌薬適正使用支援チーム、認知機能ケアチーム、免疫チェックポイント阻害薬副作用対策チーム、糖尿病教室、透析教室、褥瘡対策チーム
7.臨床研究管理室
医薬品の開発に係わる治験業務が安全かつ適切に行われるようにCRC(治験コーディネーター)と協力し、治験薬の調製、管理、関係資料の作成・管理等の業務を行っています。また実施する全ての治験及び臨床研究は、当病院内に設置されている治験審査委員会もしくは倫理審査委員会において、その治験及び臨床研究が倫理的、科学的及び医学的・薬学的に妥当であることや、当院において行うことに適当であるかどうかについて調査審議され、承認を得ています。臨床研究事務局では、この治験審査委員会と倫理審査委員会の開催・運営、必須文書の管理を行っています。資格認定(令和4年度)
- 日本薬剤師研修センター 認定薬剤師
- 日本薬剤師研修センター 認定実務実習指導薬剤師
- 日本薬剤師研修センター 漢方薬・生薬認定薬剤師
- 日本医療薬学会 認定がん専門薬剤師
- 日本医療薬学会 認定がん指導薬剤師
- 日本静脈経腸栄養学会 栄養サポートチーム専門療法士
- 日本化学療法学会 抗菌化学療法認定薬剤師
- 日本アンチドーピング機構 スポーツファーマシスト
- 日本麻酔科学会 周術期管理チーム薬剤師
- 日本病院薬剤師会 薬学認定薬剤師
- 日本病院薬剤師会 がん薬物療法認定薬剤師
- 日本緩和医療薬学会 緩和薬物療法認定薬剤師
研修終了(令和4年度)
- 厚生労働省災害派遣医療チーム研修修了
- 大阪災害派遣医療チーム研修修了
- 日本静脈経腸栄養学会 栄養サポートチーム専門療法士認定規定に基づく臨床実地修練修了
- 医療安全管理者養成研修修了
- 第32回放射性医薬品取り扱いガイドライン講習会
施設認定(令和4年度)
- 日本医療薬学会 がん専門薬剤師研修施設
- 薬学生実務実習受入施設
- 日本病院薬剤師会 がん薬物療法認定薬剤師研修事業認定研修施設(暫定研修施設)
- 日本臨床腫瘍薬学会 がん診療病院連携研修施設