泌尿器科
前立腺癌の診断と治療について
前立腺の役割
前立腺は男性だけにある臓器です。前立腺は膀胱の下にあり、尿道を取り囲んでいます。また、一部が直腸に接しているため、直腸の壁越しに指で触れることができます。
大きさはちょうど栗の実くらいで、形も栗によく似ています。前立腺の働きについては、まだわからないことが多くあります。わかっている働きは、前立腺液を分泌することです。
前立腺液は、精液の一部となり、精子を保護したり、精子に栄養を与えるとともに、その運動機能を助ける役割を果たしています。
前立腺液の中の成分の一つとして PSA というタンパク質があります。本来、前立腺液中に分泌される PSA ですが、ごく一部が血液に漏出します。血液中の PSA は前立腺癌の重要な腫瘍マーカーとして利用されています。
前立腺がんの疫学的・統計的情報
前立腺癌の罹患数は 2020 年に全世界で年間約 140 万人、男性の癌の 14.1%で第2位。死亡数は年間人で 6.8%を占め第 5 位となっています。
前立腺癌の危険因子としては年齢(高齢化)、遺伝的要因、生活様式(特に食事など)が指摘されています。
遺伝的要因の例としては、まず人種別の罹患率の違いが挙げられます。前立腺癌の生涯罹患数はアジア人で 13 人に 1 人、 白人で 8 人に 1 人、黒人で 4 人に 1 人と推定されています。
また、兄弟が前立腺癌の場合は前立腺癌に罹患するリスクが 3 倍強に増加するとも報告されています。
本邦における 2022 年のがん統計予測では、罹患数は 96400 人で男性癌の第1位、死亡数は 13300 人で第 6 位となっています。
日本における癌罹患者数・死亡者数(癌種別)
また、食生活の西洋化、高齢化などにより前立腺癌の罹患者数・死亡者数は著しく増加しています。
癌罹患数の推移(日本・男性)
前立腺癌死亡者数の推移(日本)
一方、高齢化の条件を除いた場合、その死亡率は 2000 年から 2005 年頃をピークに減少しています。
同様に、アメリカにおいても 1995 年頃より前立腺癌での死亡率の低下がみられています。これには前立腺癌を早期発見出来るようになったことや、治療法の進歩などの影響が推測されます。
年齢調整死亡率(昭和60年人口モデル)の推移
種類
ほとんどが腺房腺癌といわれる分泌細胞によって構成される浸潤性悪性上皮腫瘍です。
まれにみられる上皮性腫瘍には導管内癌、導管腺癌、尿路上皮癌などがあり、ホルモン療法
や抗癌剤に対する感受性が異なることがあります。その他神経内分泌腫瘍(小細胞癌など)
の癌が発生することもあります。神経内分泌腫瘍の発生率は 0.1%未満といわれていますが、
治療経過中に神経内分泌腫瘍に変化することがあり、去勢抵抗性前立腺癌の 18~30%にお
いてみられるとされています。
治療に対する感受性よりホルモン感受性前立腺癌(HSPC: Horomone-Sensitive Prostate
Cancer)と去勢抵抗性前立腺(CRPC: Castration-Resistant Prostate Cancer)などに分ける
ことがあり、治療薬剤の選択に影響を及ぼします。
症状
早期前立腺がんには基本的に症状はありません。前立腺癌の進行は非常に緩徐であることが多く症状のない早期前立腺癌の期間は長期間にわたります。
手術や放射線療法といった根治療法は早期がんのうちにしか行えないことが多いのが悩ましい点となります。
病気が進行し、前立腺に存在する癌が大きくなると、前立腺肥大症と同じような排尿障害が見られるようになります。
また、尿や精液に血が混じるといった症状が見られることもあります。前立腺癌は前立腺の中を貫通する尿道より離れた部位にできることが多く、非常に自覚症状の出にくい癌です。
何らかの排尿に関する症状が出てから発見される前立腺がんの約 30%は、骨などに転移をしているといわれています。
また、排尿に関しての症状なしに、転移による症状が出ることもあります。前立腺がんは骨やリンパ節に転移しやすい特徴があり、骨への転移による痛みなどで前立腺癌が見つかることもしばしばあります。
検査
症状のある前立腺癌は基本的には進行癌であるため、根治可能な前立腺癌を見つけるためにはスクリーニング検査が必要となります。前立腺癌のスクリーニングには血液の PSA 値を用います。
また、稀ではありますが、症状がある(進行癌)にもかかわらず PSA が上昇しない前立腺癌も存在します。これらは直腸診で判定できることがあります。一般的に、PSA値が 4.0 を超える場合や直腸指診で異常が見られる場合には、前立腺針生検という方法で検体を採取し、顕微鏡で観察をし、癌と診断する必要があります。また、
正確な局所診断のためには生検前に MRI 検査をしておくことが望ましいです。当院では 1 泊 2 日にて腰椎麻酔下での生検を行っています(腰椎麻酔のため痛みはありません)。
生検で癌の診断がつけば、必要に応じて骨シンチ、CT といった画像診断で転移の検索を行い病期(後述)を決定することとなります。
PSA 検診
前述のとおり、根治可能な前立腺癌を見つけることの出来る唯一の方法は血清PSA値の測定です。
住民健診における PSA 検査について、アメリカの大規模な調査でその有益性は実証されませんでした。そのため、住民健診としての PSA 検査については否定的な意見も多く、その採用は各自治体に任されています。
しかしながら、PSA 検診を受けていない人も、かかりつけ医等での日常診療中に PSA 検査が広く行われているのが現状であり(アメリカの調査では PSA 検診を受けていない人も含め全体の 90%が何らかの形でPSA検査を受けていた)、今後 PSA 検診の有益性を証明することは難しいかもしれません。
一方、日本や欧米における2000 年頃よりの前立腺癌による死亡率の低下について、当時特に治療法の技術革新はなく、1990 年代に血清 PSA 測定が一般化し根治可能な前立腺癌の発見が急増したことがその原因と強く推測されます。また、少し古い報告にはなりますが、PSA検診の有益性を肯定する質の高い報告もいくつも存在しています。
日本泌尿器科学会では、住民検診では 50 歳から受診対象とするのに対し、人間ドック等の受益者負担による PSA 検診では、癌発見率は低いが高リスク群の同定と将来の癌発見時のメリットを考え、40 歳代からの受診を推奨しています。また、以下の通り、検診を受けることによる利益・不利益を理解する必要があるともしています。
前立腺がん検診を受診することの主な利益としては、進行癌、転移癌への進展抑制と前立腺癌の死亡率低下、癌を早期に発見することにより個々の症例において多くの治療法からライフスタイルや社会的な要因により適合した侵襲の少ない治療の選択が可能になることを挙げています。
一方不利益としては、検診では発見できない癌があること、PSA 検査の偽陽性があること、不必要な前立腺生検の増加、前立腺生検に伴う合併症・過剰診断・過剰治療のリスクが増加すること、治療の合併症による生活の質(QOL)の低下を挙げています。
病期と治療
前立腺癌の治療を決定する病気側の要素としては、「病期(ステージ)」(=進行の程度)、「グリーソンスコア」(=悪性度)があげられます。病期の分類としては TNM 分類が用いられることが一般的です。
「T」は原発の癌の広がり、「N」は周囲のリンパ節への転移の有無、「M」は遠くのリンパ節や多臓器への血液を介した転移の有無を表します。また、この TNM 分類をもとにステージが決められます。
癌組織を顕微鏡で観察しグリーソンパターンという悪性度を決定します(3 から 5 までで大きいほど悪性度が高い)。
観察した中で一番目と二番目に優勢なパターンとでグリーソングループ分類(GG)を行います(1~5 で大きいほど悪い)。
GG は前立腺癌の予後と非常に高い相関性を示すことがしられています。
転移のない前立腺癌に対しては治療の選択肢が多いため、PSA 値、GG、T 分類などを用いてリスク分類をします。
リスク分類は多岐にわたるのでその一つである NCCN 分類を表に示します。
前立腺癌は、他の癌に比べ進行が緩徐であることが多く、命に関わらない前立腺癌も多くみられます。
このために治療を決定する際には、患者さん側の要素も十分に考慮する必要があります。
患者さん側の要素には年齢や健康状態(患者さんごとの余命の推定)のみならず、患者さんの治療に対する希望などが挙げられます。
参考までに、前立腺癌に対する初期治療の原則を以下の図に示します。
各治療について
監視療法
PSA 検査により見つかるようになった早期癌の中には治療の不要な癌も少なからず存在します(前立腺癌は進行が遅い。高齢で見つかることが多い。
前立腺癌が悪くなる前に他の病気で天寿を全うする方も多数おられるということです)。
監視療法とは、治療を行わなくても前立腺癌で命を落とさないであろうと考えられる患者さんに対し、治療は行わず厳重に監視を続け過剰な治療を防ぐ方法です。
必要とされた時には必要とされる治療を速やかに行うことが前提であり、いわゆる放置しているというわけではありません。
監視療法の適応となるのは早期がんの中でもリスクの低い状況、具体的には PSA 値が 10 以下、病期が T2以下、グリーソンスコアが 6 以下、前立腺体積当たりの PSA 値が一定以下であるという条件が必要です。
その他にもさまざまな条件が提唱されてはいます。一般的な監視療法の手順としては 3~6 カ月ごとの PSA 検査や直腸診、1~3 年ごとの前立腺生検を行われることが多く、病状悪化のみられた場合などには治療開始を検討することとなります。
監視療法の問題点としては監視療法適応患者の選択基準がしっかりと定義されていないこと、具体的な経過観察における検査法が適切かどうか不明であることなどがあります。
また、監視療法の短期的な生命予後については根治療法に比較的近いものであることはわかっています。しかし、10年間での転移巣の出現などは手術療法の2倍以上であるとの報告もあり、長期的な生命予後についてはいまだ不明であることは留意する必要があります。
フォーカルセラピー
前立腺癌においては正常前立腺とがん組織との明瞭な区別が難しいこともあり、従来は前立腺全体への治療が唯一の治療とされてきました。
フォーカルセラピーとは、患者の生命予後に関係すると考えられる癌細胞のみを治療し、できる限り正常組織を残し、不要な合併症を避けようとする治療です。
根治療法と監視療法との中間に位置する治療概念となり、主に低リスク限局性前立腺癌をその対象としています。
具体的には高密度焦点超音波治療法(HIFU といいます)、凍結療法、小線源療法などがあります。良い治療の選択肢となる可能性はあるものの、現段階において治療効果への根拠は十分確立はされていません。
治療を選択するにあたっては専門家と十分話し合って納得して治療を受ける必要があります。
手術療法
手術療法は無治療経過観察(治療待機療法)と比較して全生存率の改善が証明された唯一の根治的治療法です。具体的には、前立腺と精のうを摘出し、その後、膀胱と尿道をつなぎます。また、前立腺の周囲のリンパ節も取り除くこともあります。
手術療法が最も推奨されるのは、期待余命が 10 年以上の低~中リスク群とされています。低リスク群では監視療法についても考慮する必要があります。
高リスク群に関しては、従来は内分泌療法+放射線療法が標準治療とされてきましたが、近年手術療法でも同等またはそれ以上の成績が報告されるようになってきています。このため、高リスク群においても手術療法が選択されることが多くなってきています。
畜尿障害や排尿障害といった下部尿路症状は手術によって改善効果が見られます。放射線治療においては下部尿路症状が増悪することはあるものの改善することはないため、下部尿路症状は治療法として手術を選択する意義の一つとなります。
手術の方法には、開腹手術、腹腔鏡手術、ロボット手術があります。ロボット支援腹腔鏡下前立腺全摘除術では、より細かい観察・操作を行うことでで、より安全で機能を温存した手術が行えるようになりました。
近年は手術支援ロボットの普及とともにロボット支援手術が標準となってきています。
手術療法における患者さんの QOL を低下させる合併症としては術後尿失禁・性機能障害が挙げられます。従来、術後尿失禁の回復率はおよそ 60~96%と報告されていました。
ロボット支援下手術は従来の手術より尿禁制回復が良好であるとされており、その他技術の向上により年々術後尿失禁については改善されていますが、未だ一定の割合で術後尿失禁に悩まされる患者さんがいることには注意が必要です。
また、性機能については性機能温存手術を行った症例でも性機能が温存されるのは 50%強であるとされています。また性機能温存手術については癌の根治性との兼ね合いで適応される症例は限定されます。また、ロボット支援手術により従来よりも良好な術後成績が得られるとの報告が散見されるようになってきました。
放射線療法
放射線治療は、体外より放射線を照射する外照射療法と、体内に放射線物質を埋め込み放射線を照射する組織内照射療法に大きく分けること出来ます。 広く普及している外照射療法ですが、さらに X 線外照射・粒子線治療に分けることが出来ます。
粒子線治療(陽子線治療および重粒子線治療)は、X 線外照射療法を有意に上回る治療成績は示されていないものの同等性が評価され、2018 年4月1日より限局性および局所進行性前立腺癌に対する保険収載が認められ、根治的外照射療法のオプションの1つとして日常臨床に用いられるようになりました。
現時点において、治療成績、有害事象、費用対効果のいずれにおいても、強度変調放射線治療(intensity-modulated radiation therapy;IMRT)等の X 線治療と比較した優位性は明確ではなく、国内外で臨床試験や前向き観察研究が進行中という状況です。
放射線治療では前立腺周囲組織に放射線が照射されることで合併症が生じます。主な合併症としては直腸障害(血便・便失禁など)、尿路障害(尿意切迫感・血尿など)、性機能障害などが挙げられます。
直腸障害、尿路障害は放射線治療後3か月以内に生じる急性のものが多いのですが、これらの急性の症状は1年以内に解消されることがほとんどです。1%未満と稀ではありますが、これ以降に生じる晩期合併症としての直腸障害や尿路障害は重篤になることがあります。
性機能障害については早期におこることはあまりありませんが、治療後の晩期の合併症としておこることがほとんどです。
また、治療後の膀胱癌や直腸癌の発生頻度は約2倍程度であるとの報告もあり、二次発癌には注意が必要です。
当センターでは、強度変調放射線治療(IMRT)の応用型で回転原体照射に強度変調機能を加えた強度変調回転照射法(VMA)を用いた外部放射線治療を行っています。
また、放射線の直腸への影響を低減する目的で行う 『直腸周囲ハイドロゲルスペーサ・SpaceOAR®』の留置を原則としており、放射線治療中の前立腺の変位に追従し、治療精度を上げることの出来る金属マーカー留置も同時に行っています。
これらの組み合わせで高い治療効果と低い合併症の発生との両立が可能となっています。
ホルモン療法
前立腺はその働きの性質上、その活性化には男性ホルモンを必要とします。ほとんどの前立腺癌においても同様に、その活性化には男性ホルモンを必要とします。そのため、男性ホルモンの働きを抑えることで前立腺癌を抑えることが可能でありこの治療をホルモン療法と呼びます。
ホルモン療法の有効性が 1941 年に報告されてから、現在に至るまでホルモン療法は未治療の前立腺癌の治療の中心であり続けています。以前のホルモン療法は外科的去勢術・女性ホルモンの投与といったものが中心でしたが、
現在では精巣の男性ホルモンの生成を阻害する薬剤(主に注射となります)+癌細胞内での男性ホルモンの作用を抑える薬剤(飲み薬)の併用療法が広く行われており、初期治療としての有効率は 90%以上と非常に強力な治療となります。
また、近年は男性ホルモンをなお一層阻害する新規のホルモン療法剤がいくつも開発され治療の選択肢が広がってきています。
一般的にホルモン療法が用いられるのは、少し進行した前立腺癌に対する放射線治療の補助薬剤として、または根治療法の適応ではない進行性前立腺癌に対する初期治療としてなどがあげられます。
本邦においては、根治療法の適さない高齢者の早期がんなどに対しても用いられることもあります。
このようにホルモン療法は非常に優れた治療法ではありますが、基本的に癌が根治するわけではなく、時間の経過とともに治療の効果が薄らいでいきます。
ホルモン療法が有効な期間は、平均すると約3年程度とされていますが、患者さんによってさまざまであり、最短で数ヶ月の患者さんもいれば、10 年以上も有効な患者さんまでいます。
一次ホルモン療法に耐性となっても、新規のホルモン療法剤が有効なことも多くみられます。
ホルモン療法の副作用は、主に性ホルモンがなくなることによる症状(更年期障害)と男性ホルモンがなくなることによる症状などがあげられます。
更年期障害としては、急なほてりや発汗(ホットフラッシュといいます)、性機能障害、疲労などが自覚症状として現れ、患者さんのQOLを下げます。
長期的には骨粗しょう症(骨密度が低下し、骨折のリスクが増加)なども挙げられます。男性らしさの消失によっては、筋肉の減少などがみられ基礎代謝量の低下に伴い肥満・その他の代謝障害が生じることがあります。
化学療法
広く抗がん剤と言われてきた細胞を殺すタイプの薬剤のことです。ホルモン療法が効かなくなった患者さんや、男性ホルモンの影響が弱い特殊なタイプの前立腺癌に対する初期治療として用いられます。
近年では悪性度の高い進行がんの初期治療として用いられることもあります。
ホルモン療法に比べると副作用が強く、有効期間も限定的であることが多い薬剤です。
その他の薬剤
骨の転移に対し特異的に効果を有する放射線治療薬剤やある種の遺伝変異を有する前立腺癌に対し有効な薬剤等、さまざまな新規薬剤が開発されてきており、今後も治療効果の向上が期待されています。
予防
食事などを中心とした生活様式が前立腺癌発生の危険因子であることは明らかになっていいます。また、大豆の中に含まれるイソフラボン、緑茶に含まれるカテキン、ニンニク等の植物や肉・海産物に含まれる微量元素であるセレニウム、
トマト缶や調理したトマト等に多く含まれるリコペン(通常の野菜のトマトでは効果がないようです)等の機能因子による前立腺癌発症予防効果の可能性が報告されてはいます。しかし、十分に解明されているわけではなく、また、生活文化そのものを改めることは現実的には難しいと考えられます。
前立腺癌を予防する薬剤も確立はしていません。
前立腺は男性だけにある臓器です。前立腺は膀胱の下にあり、尿道を取り囲んでいます。また、一部が直腸に接しているため、直腸の壁越しに指で触れることができます。
大きさはちょうど栗の実くらいで、形も栗によく似ています。前立腺の働きについては、まだわからないことが多くあります。わかっている働きは、前立腺液を分泌することです。
前立腺液は、精液の一部となり、精子を保護したり、精子に栄養を与えるとともに、その運動機能を助ける役割を果たしています。 前立腺液の中の成分の一つとして PSA というタンパク質があります。本来、前立腺液中に分泌される PSA ですが、ごく一部が血液に漏出します。血液中の PSA は前立腺癌の重要な腫瘍マーカーとして利用されています。
前立腺液は、精液の一部となり、精子を保護したり、精子に栄養を与えるとともに、その運動機能を助ける役割を果たしています。 前立腺液の中の成分の一つとして PSA というタンパク質があります。本来、前立腺液中に分泌される PSA ですが、ごく一部が血液に漏出します。血液中の PSA は前立腺癌の重要な腫瘍マーカーとして利用されています。

前立腺癌の罹患数は 2020 年に全世界で年間約 140 万人、男性の癌の 14.1%で第2位。死亡数は年間人で 6.8%を占め第 5 位となっています。
前立腺癌の危険因子としては年齢(高齢化)、遺伝的要因、生活様式(特に食事など)が指摘されています。
遺伝的要因の例としては、まず人種別の罹患率の違いが挙げられます。前立腺癌の生涯罹患数はアジア人で 13 人に 1 人、 白人で 8 人に 1 人、黒人で 4 人に 1 人と推定されています。 また、兄弟が前立腺癌の場合は前立腺癌に罹患するリスクが 3 倍強に増加するとも報告されています。
本邦における 2022 年のがん統計予測では、罹患数は 96400 人で男性癌の第1位、死亡数は 13300 人で第 6 位となっています。
前立腺癌の危険因子としては年齢(高齢化)、遺伝的要因、生活様式(特に食事など)が指摘されています。
遺伝的要因の例としては、まず人種別の罹患率の違いが挙げられます。前立腺癌の生涯罹患数はアジア人で 13 人に 1 人、 白人で 8 人に 1 人、黒人で 4 人に 1 人と推定されています。 また、兄弟が前立腺癌の場合は前立腺癌に罹患するリスクが 3 倍強に増加するとも報告されています。
本邦における 2022 年のがん統計予測では、罹患数は 96400 人で男性癌の第1位、死亡数は 13300 人で第 6 位となっています。

また、食生活の西洋化、高齢化などにより前立腺癌の罹患者数・死亡者数は著しく増加しています。


一方、高齢化の条件を除いた場合、その死亡率は 2000 年から 2005 年頃をピークに減少しています。
同様に、アメリカにおいても 1995 年頃より前立腺癌での死亡率の低下がみられています。これには前立腺癌を早期発見出来るようになったことや、治療法の進歩などの影響が推測されます。

ほとんどが腺房腺癌といわれる分泌細胞によって構成される浸潤性悪性上皮腫瘍です。
まれにみられる上皮性腫瘍には導管内癌、導管腺癌、尿路上皮癌などがあり、ホルモン療法
や抗癌剤に対する感受性が異なることがあります。その他神経内分泌腫瘍(小細胞癌など)
の癌が発生することもあります。神経内分泌腫瘍の発生率は 0.1%未満といわれていますが、
治療経過中に神経内分泌腫瘍に変化することがあり、去勢抵抗性前立腺癌の 18~30%にお
いてみられるとされています。
治療に対する感受性よりホルモン感受性前立腺癌(HSPC: Horomone-Sensitive Prostate
Cancer)と去勢抵抗性前立腺(CRPC: Castration-Resistant Prostate Cancer)などに分ける
ことがあり、治療薬剤の選択に影響を及ぼします。
早期前立腺がんには基本的に症状はありません。前立腺癌の進行は非常に緩徐であることが多く症状のない早期前立腺癌の期間は長期間にわたります。
手術や放射線療法といった根治療法は早期がんのうちにしか行えないことが多いのが悩ましい点となります。
病気が進行し、前立腺に存在する癌が大きくなると、前立腺肥大症と同じような排尿障害が見られるようになります。 また、尿や精液に血が混じるといった症状が見られることもあります。前立腺癌は前立腺の中を貫通する尿道より離れた部位にできることが多く、非常に自覚症状の出にくい癌です。 何らかの排尿に関する症状が出てから発見される前立腺がんの約 30%は、骨などに転移をしているといわれています。
また、排尿に関しての症状なしに、転移による症状が出ることもあります。前立腺がんは骨やリンパ節に転移しやすい特徴があり、骨への転移による痛みなどで前立腺癌が見つかることもしばしばあります。
病気が進行し、前立腺に存在する癌が大きくなると、前立腺肥大症と同じような排尿障害が見られるようになります。 また、尿や精液に血が混じるといった症状が見られることもあります。前立腺癌は前立腺の中を貫通する尿道より離れた部位にできることが多く、非常に自覚症状の出にくい癌です。 何らかの排尿に関する症状が出てから発見される前立腺がんの約 30%は、骨などに転移をしているといわれています。
また、排尿に関しての症状なしに、転移による症状が出ることもあります。前立腺がんは骨やリンパ節に転移しやすい特徴があり、骨への転移による痛みなどで前立腺癌が見つかることもしばしばあります。
症状のある前立腺癌は基本的には進行癌であるため、根治可能な前立腺癌を見つけるためにはスクリーニング検査が必要となります。前立腺癌のスクリーニングには血液の PSA 値を用います。
また、稀ではありますが、症状がある(進行癌)にもかかわらず PSA が上昇しない前立腺癌も存在します。これらは直腸診で判定できることがあります。一般的に、PSA値が 4.0 を超える場合や直腸指診で異常が見られる場合には、前立腺針生検という方法で検体を採取し、顕微鏡で観察をし、癌と診断する必要があります。また、
正確な局所診断のためには生検前に MRI 検査をしておくことが望ましいです。当院では 1 泊 2 日にて腰椎麻酔下での生検を行っています(腰椎麻酔のため痛みはありません)。
生検で癌の診断がつけば、必要に応じて骨シンチ、CT といった画像診断で転移の検索を行い病期(後述)を決定することとなります。

前述のとおり、根治可能な前立腺癌を見つけることの出来る唯一の方法は血清PSA値の測定です。
住民健診における PSA 検査について、アメリカの大規模な調査でその有益性は実証されませんでした。そのため、住民健診としての PSA 検査については否定的な意見も多く、その採用は各自治体に任されています。 しかしながら、PSA 検診を受けていない人も、かかりつけ医等での日常診療中に PSA 検査が広く行われているのが現状であり(アメリカの調査では PSA 検診を受けていない人も含め全体の 90%が何らかの形でPSA検査を受けていた)、今後 PSA 検診の有益性を証明することは難しいかもしれません。 一方、日本や欧米における2000 年頃よりの前立腺癌による死亡率の低下について、当時特に治療法の技術革新はなく、1990 年代に血清 PSA 測定が一般化し根治可能な前立腺癌の発見が急増したことがその原因と強く推測されます。また、少し古い報告にはなりますが、PSA検診の有益性を肯定する質の高い報告もいくつも存在しています。
日本泌尿器科学会では、住民検診では 50 歳から受診対象とするのに対し、人間ドック等の受益者負担による PSA 検診では、癌発見率は低いが高リスク群の同定と将来の癌発見時のメリットを考え、40 歳代からの受診を推奨しています。また、以下の通り、検診を受けることによる利益・不利益を理解する必要があるともしています。
前立腺がん検診を受診することの主な利益としては、進行癌、転移癌への進展抑制と前立腺癌の死亡率低下、癌を早期に発見することにより個々の症例において多くの治療法からライフスタイルや社会的な要因により適合した侵襲の少ない治療の選択が可能になることを挙げています。
一方不利益としては、検診では発見できない癌があること、PSA 検査の偽陽性があること、不必要な前立腺生検の増加、前立腺生検に伴う合併症・過剰診断・過剰治療のリスクが増加すること、治療の合併症による生活の質(QOL)の低下を挙げています。
住民健診における PSA 検査について、アメリカの大規模な調査でその有益性は実証されませんでした。そのため、住民健診としての PSA 検査については否定的な意見も多く、その採用は各自治体に任されています。 しかしながら、PSA 検診を受けていない人も、かかりつけ医等での日常診療中に PSA 検査が広く行われているのが現状であり(アメリカの調査では PSA 検診を受けていない人も含め全体の 90%が何らかの形でPSA検査を受けていた)、今後 PSA 検診の有益性を証明することは難しいかもしれません。 一方、日本や欧米における2000 年頃よりの前立腺癌による死亡率の低下について、当時特に治療法の技術革新はなく、1990 年代に血清 PSA 測定が一般化し根治可能な前立腺癌の発見が急増したことがその原因と強く推測されます。また、少し古い報告にはなりますが、PSA検診の有益性を肯定する質の高い報告もいくつも存在しています。
日本泌尿器科学会では、住民検診では 50 歳から受診対象とするのに対し、人間ドック等の受益者負担による PSA 検診では、癌発見率は低いが高リスク群の同定と将来の癌発見時のメリットを考え、40 歳代からの受診を推奨しています。また、以下の通り、検診を受けることによる利益・不利益を理解する必要があるともしています。
前立腺がん検診を受診することの主な利益としては、進行癌、転移癌への進展抑制と前立腺癌の死亡率低下、癌を早期に発見することにより個々の症例において多くの治療法からライフスタイルや社会的な要因により適合した侵襲の少ない治療の選択が可能になることを挙げています。
一方不利益としては、検診では発見できない癌があること、PSA 検査の偽陽性があること、不必要な前立腺生検の増加、前立腺生検に伴う合併症・過剰診断・過剰治療のリスクが増加すること、治療の合併症による生活の質(QOL)の低下を挙げています。
前立腺癌の治療を決定する病気側の要素としては、「病期(ステージ)」(=進行の程度)、「グリーソンスコア」(=悪性度)があげられます。病期の分類としては TNM 分類が用いられることが一般的です。
「T」は原発の癌の広がり、「N」は周囲のリンパ節への転移の有無、「M」は遠くのリンパ節や多臓器への血液を介した転移の有無を表します。また、この TNM 分類をもとにステージが決められます。


癌組織を顕微鏡で観察しグリーソンパターンという悪性度を決定します(3 から 5 までで大きいほど悪性度が高い)。
観察した中で一番目と二番目に優勢なパターンとでグリーソングループ分類(GG)を行います(1~5 で大きいほど悪い)。
GG は前立腺癌の予後と非常に高い相関性を示すことがしられています。
転移のない前立腺癌に対しては治療の選択肢が多いため、PSA 値、GG、T 分類などを用いてリスク分類をします。 リスク分類は多岐にわたるのでその一つである NCCN 分類を表に示します。
転移のない前立腺癌に対しては治療の選択肢が多いため、PSA 値、GG、T 分類などを用いてリスク分類をします。 リスク分類は多岐にわたるのでその一つである NCCN 分類を表に示します。

前立腺癌は、他の癌に比べ進行が緩徐であることが多く、命に関わらない前立腺癌も多くみられます。
このために治療を決定する際には、患者さん側の要素も十分に考慮する必要があります。
患者さん側の要素には年齢や健康状態(患者さんごとの余命の推定)のみならず、患者さんの治療に対する希望などが挙げられます。
参考までに、前立腺癌に対する初期治療の原則を以下の図に示します。
参考までに、前立腺癌に対する初期治療の原則を以下の図に示します。

各治療について
監視療法
PSA 検査により見つかるようになった早期癌の中には治療の不要な癌も少なからず存在します(前立腺癌は進行が遅い。高齢で見つかることが多い。
前立腺癌が悪くなる前に他の病気で天寿を全うする方も多数おられるということです)。
監視療法とは、治療を行わなくても前立腺癌で命を落とさないであろうと考えられる患者さんに対し、治療は行わず厳重に監視を続け過剰な治療を防ぐ方法です。
必要とされた時には必要とされる治療を速やかに行うことが前提であり、いわゆる放置しているというわけではありません。
監視療法の適応となるのは早期がんの中でもリスクの低い状況、具体的には PSA 値が 10 以下、病期が T2以下、グリーソンスコアが 6 以下、前立腺体積当たりの PSA 値が一定以下であるという条件が必要です。
その他にもさまざまな条件が提唱されてはいます。一般的な監視療法の手順としては 3~6 カ月ごとの PSA 検査や直腸診、1~3 年ごとの前立腺生検を行われることが多く、病状悪化のみられた場合などには治療開始を検討することとなります。
監視療法の問題点としては監視療法適応患者の選択基準がしっかりと定義されていないこと、具体的な経過観察における検査法が適切かどうか不明であることなどがあります。
また、監視療法の短期的な生命予後については根治療法に比較的近いものであることはわかっています。しかし、10年間での転移巣の出現などは手術療法の2倍以上であるとの報告もあり、長期的な生命予後についてはいまだ不明であることは留意する必要があります。
監視療法の問題点としては監視療法適応患者の選択基準がしっかりと定義されていないこと、具体的な経過観察における検査法が適切かどうか不明であることなどがあります。
また、監視療法の短期的な生命予後については根治療法に比較的近いものであることはわかっています。しかし、10年間での転移巣の出現などは手術療法の2倍以上であるとの報告もあり、長期的な生命予後についてはいまだ不明であることは留意する必要があります。
フォーカルセラピー
前立腺癌においては正常前立腺とがん組織との明瞭な区別が難しいこともあり、従来は前立腺全体への治療が唯一の治療とされてきました。
フォーカルセラピーとは、患者の生命予後に関係すると考えられる癌細胞のみを治療し、できる限り正常組織を残し、不要な合併症を避けようとする治療です。
根治療法と監視療法との中間に位置する治療概念となり、主に低リスク限局性前立腺癌をその対象としています。
具体的には高密度焦点超音波治療法(HIFU といいます)、凍結療法、小線源療法などがあります。良い治療の選択肢となる可能性はあるものの、現段階において治療効果への根拠は十分確立はされていません。
治療を選択するにあたっては専門家と十分話し合って納得して治療を受ける必要があります。
手術療法
手術療法は無治療経過観察(治療待機療法)と比較して全生存率の改善が証明された唯一の根治的治療法です。具体的には、前立腺と精のうを摘出し、その後、膀胱と尿道をつなぎます。また、前立腺の周囲のリンパ節も取り除くこともあります。
手術療法が最も推奨されるのは、期待余命が 10 年以上の低~中リスク群とされています。低リスク群では監視療法についても考慮する必要があります。 高リスク群に関しては、従来は内分泌療法+放射線療法が標準治療とされてきましたが、近年手術療法でも同等またはそれ以上の成績が報告されるようになってきています。このため、高リスク群においても手術療法が選択されることが多くなってきています。
畜尿障害や排尿障害といった下部尿路症状は手術によって改善効果が見られます。放射線治療においては下部尿路症状が増悪することはあるものの改善することはないため、下部尿路症状は治療法として手術を選択する意義の一つとなります。
手術の方法には、開腹手術、腹腔鏡手術、ロボット手術があります。ロボット支援腹腔鏡下前立腺全摘除術では、より細かい観察・操作を行うことでで、より安全で機能を温存した手術が行えるようになりました。 近年は手術支援ロボットの普及とともにロボット支援手術が標準となってきています。
手術療法における患者さんの QOL を低下させる合併症としては術後尿失禁・性機能障害が挙げられます。従来、術後尿失禁の回復率はおよそ 60~96%と報告されていました。 ロボット支援下手術は従来の手術より尿禁制回復が良好であるとされており、その他技術の向上により年々術後尿失禁については改善されていますが、未だ一定の割合で術後尿失禁に悩まされる患者さんがいることには注意が必要です。 また、性機能については性機能温存手術を行った症例でも性機能が温存されるのは 50%強であるとされています。また性機能温存手術については癌の根治性との兼ね合いで適応される症例は限定されます。また、ロボット支援手術により従来よりも良好な術後成績が得られるとの報告が散見されるようになってきました。
手術療法が最も推奨されるのは、期待余命が 10 年以上の低~中リスク群とされています。低リスク群では監視療法についても考慮する必要があります。 高リスク群に関しては、従来は内分泌療法+放射線療法が標準治療とされてきましたが、近年手術療法でも同等またはそれ以上の成績が報告されるようになってきています。このため、高リスク群においても手術療法が選択されることが多くなってきています。
畜尿障害や排尿障害といった下部尿路症状は手術によって改善効果が見られます。放射線治療においては下部尿路症状が増悪することはあるものの改善することはないため、下部尿路症状は治療法として手術を選択する意義の一つとなります。
手術の方法には、開腹手術、腹腔鏡手術、ロボット手術があります。ロボット支援腹腔鏡下前立腺全摘除術では、より細かい観察・操作を行うことでで、より安全で機能を温存した手術が行えるようになりました。 近年は手術支援ロボットの普及とともにロボット支援手術が標準となってきています。
手術療法における患者さんの QOL を低下させる合併症としては術後尿失禁・性機能障害が挙げられます。従来、術後尿失禁の回復率はおよそ 60~96%と報告されていました。 ロボット支援下手術は従来の手術より尿禁制回復が良好であるとされており、その他技術の向上により年々術後尿失禁については改善されていますが、未だ一定の割合で術後尿失禁に悩まされる患者さんがいることには注意が必要です。 また、性機能については性機能温存手術を行った症例でも性機能が温存されるのは 50%強であるとされています。また性機能温存手術については癌の根治性との兼ね合いで適応される症例は限定されます。また、ロボット支援手術により従来よりも良好な術後成績が得られるとの報告が散見されるようになってきました。
放射線療法
放射線治療は、体外より放射線を照射する外照射療法と、体内に放射線物質を埋め込み放射線を照射する組織内照射療法に大きく分けること出来ます。 広く普及している外照射療法ですが、さらに X 線外照射・粒子線治療に分けることが出来ます。
粒子線治療(陽子線治療および重粒子線治療)は、X 線外照射療法を有意に上回る治療成績は示されていないものの同等性が評価され、2018 年4月1日より限局性および局所進行性前立腺癌に対する保険収載が認められ、根治的外照射療法のオプションの1つとして日常臨床に用いられるようになりました。
現時点において、治療成績、有害事象、費用対効果のいずれにおいても、強度変調放射線治療(intensity-modulated radiation therapy;IMRT)等の X 線治療と比較した優位性は明確ではなく、国内外で臨床試験や前向き観察研究が進行中という状況です。
放射線治療では前立腺周囲組織に放射線が照射されることで合併症が生じます。主な合併症としては直腸障害(血便・便失禁など)、尿路障害(尿意切迫感・血尿など)、性機能障害などが挙げられます。 直腸障害、尿路障害は放射線治療後3か月以内に生じる急性のものが多いのですが、これらの急性の症状は1年以内に解消されることがほとんどです。1%未満と稀ではありますが、これ以降に生じる晩期合併症としての直腸障害や尿路障害は重篤になることがあります。 性機能障害については早期におこることはあまりありませんが、治療後の晩期の合併症としておこることがほとんどです。
また、治療後の膀胱癌や直腸癌の発生頻度は約2倍程度であるとの報告もあり、二次発癌には注意が必要です。
当センターでは、強度変調放射線治療(IMRT)の応用型で回転原体照射に強度変調機能を加えた強度変調回転照射法(VMA)を用いた外部放射線治療を行っています。 また、放射線の直腸への影響を低減する目的で行う 『直腸周囲ハイドロゲルスペーサ・SpaceOAR®』の留置を原則としており、放射線治療中の前立腺の変位に追従し、治療精度を上げることの出来る金属マーカー留置も同時に行っています。 これらの組み合わせで高い治療効果と低い合併症の発生との両立が可能となっています。
放射線治療では前立腺周囲組織に放射線が照射されることで合併症が生じます。主な合併症としては直腸障害(血便・便失禁など)、尿路障害(尿意切迫感・血尿など)、性機能障害などが挙げられます。 直腸障害、尿路障害は放射線治療後3か月以内に生じる急性のものが多いのですが、これらの急性の症状は1年以内に解消されることがほとんどです。1%未満と稀ではありますが、これ以降に生じる晩期合併症としての直腸障害や尿路障害は重篤になることがあります。 性機能障害については早期におこることはあまりありませんが、治療後の晩期の合併症としておこることがほとんどです。
また、治療後の膀胱癌や直腸癌の発生頻度は約2倍程度であるとの報告もあり、二次発癌には注意が必要です。
当センターでは、強度変調放射線治療(IMRT)の応用型で回転原体照射に強度変調機能を加えた強度変調回転照射法(VMA)を用いた外部放射線治療を行っています。 また、放射線の直腸への影響を低減する目的で行う 『直腸周囲ハイドロゲルスペーサ・SpaceOAR®』の留置を原則としており、放射線治療中の前立腺の変位に追従し、治療精度を上げることの出来る金属マーカー留置も同時に行っています。 これらの組み合わせで高い治療効果と低い合併症の発生との両立が可能となっています。
ホルモン療法
前立腺はその働きの性質上、その活性化には男性ホルモンを必要とします。ほとんどの前立腺癌においても同様に、その活性化には男性ホルモンを必要とします。そのため、男性ホルモンの働きを抑えることで前立腺癌を抑えることが可能でありこの治療をホルモン療法と呼びます。
ホルモン療法の有効性が 1941 年に報告されてから、現在に至るまでホルモン療法は未治療の前立腺癌の治療の中心であり続けています。以前のホルモン療法は外科的去勢術・女性ホルモンの投与といったものが中心でしたが、 現在では精巣の男性ホルモンの生成を阻害する薬剤(主に注射となります)+癌細胞内での男性ホルモンの作用を抑える薬剤(飲み薬)の併用療法が広く行われており、初期治療としての有効率は 90%以上と非常に強力な治療となります。 また、近年は男性ホルモンをなお一層阻害する新規のホルモン療法剤がいくつも開発され治療の選択肢が広がってきています。
一般的にホルモン療法が用いられるのは、少し進行した前立腺癌に対する放射線治療の補助薬剤として、または根治療法の適応ではない進行性前立腺癌に対する初期治療としてなどがあげられます。 本邦においては、根治療法の適さない高齢者の早期がんなどに対しても用いられることもあります。
このようにホルモン療法は非常に優れた治療法ではありますが、基本的に癌が根治するわけではなく、時間の経過とともに治療の効果が薄らいでいきます。 ホルモン療法が有効な期間は、平均すると約3年程度とされていますが、患者さんによってさまざまであり、最短で数ヶ月の患者さんもいれば、10 年以上も有効な患者さんまでいます。 一次ホルモン療法に耐性となっても、新規のホルモン療法剤が有効なことも多くみられます。
ホルモン療法の副作用は、主に性ホルモンがなくなることによる症状(更年期障害)と男性ホルモンがなくなることによる症状などがあげられます。 更年期障害としては、急なほてりや発汗(ホットフラッシュといいます)、性機能障害、疲労などが自覚症状として現れ、患者さんのQOLを下げます。 長期的には骨粗しょう症(骨密度が低下し、骨折のリスクが増加)なども挙げられます。男性らしさの消失によっては、筋肉の減少などがみられ基礎代謝量の低下に伴い肥満・その他の代謝障害が生じることがあります。
ホルモン療法の有効性が 1941 年に報告されてから、現在に至るまでホルモン療法は未治療の前立腺癌の治療の中心であり続けています。以前のホルモン療法は外科的去勢術・女性ホルモンの投与といったものが中心でしたが、 現在では精巣の男性ホルモンの生成を阻害する薬剤(主に注射となります)+癌細胞内での男性ホルモンの作用を抑える薬剤(飲み薬)の併用療法が広く行われており、初期治療としての有効率は 90%以上と非常に強力な治療となります。 また、近年は男性ホルモンをなお一層阻害する新規のホルモン療法剤がいくつも開発され治療の選択肢が広がってきています。
一般的にホルモン療法が用いられるのは、少し進行した前立腺癌に対する放射線治療の補助薬剤として、または根治療法の適応ではない進行性前立腺癌に対する初期治療としてなどがあげられます。 本邦においては、根治療法の適さない高齢者の早期がんなどに対しても用いられることもあります。
このようにホルモン療法は非常に優れた治療法ではありますが、基本的に癌が根治するわけではなく、時間の経過とともに治療の効果が薄らいでいきます。 ホルモン療法が有効な期間は、平均すると約3年程度とされていますが、患者さんによってさまざまであり、最短で数ヶ月の患者さんもいれば、10 年以上も有効な患者さんまでいます。 一次ホルモン療法に耐性となっても、新規のホルモン療法剤が有効なことも多くみられます。
ホルモン療法の副作用は、主に性ホルモンがなくなることによる症状(更年期障害)と男性ホルモンがなくなることによる症状などがあげられます。 更年期障害としては、急なほてりや発汗(ホットフラッシュといいます)、性機能障害、疲労などが自覚症状として現れ、患者さんのQOLを下げます。 長期的には骨粗しょう症(骨密度が低下し、骨折のリスクが増加)なども挙げられます。男性らしさの消失によっては、筋肉の減少などがみられ基礎代謝量の低下に伴い肥満・その他の代謝障害が生じることがあります。
化学療法
広く抗がん剤と言われてきた細胞を殺すタイプの薬剤のことです。ホルモン療法が効かなくなった患者さんや、男性ホルモンの影響が弱い特殊なタイプの前立腺癌に対する初期治療として用いられます。
近年では悪性度の高い進行がんの初期治療として用いられることもあります。
ホルモン療法に比べると副作用が強く、有効期間も限定的であることが多い薬剤です。
ホルモン療法に比べると副作用が強く、有効期間も限定的であることが多い薬剤です。
その他の薬剤
骨の転移に対し特異的に効果を有する放射線治療薬剤やある種の遺伝変異を有する前立腺癌に対し有効な薬剤等、さまざまな新規薬剤が開発されてきており、今後も治療効果の向上が期待されています。
予防
食事などを中心とした生活様式が前立腺癌発生の危険因子であることは明らかになっていいます。また、大豆の中に含まれるイソフラボン、緑茶に含まれるカテキン、ニンニク等の植物や肉・海産物に含まれる微量元素であるセレニウム、
トマト缶や調理したトマト等に多く含まれるリコペン(通常の野菜のトマトでは効果がないようです)等の機能因子による前立腺癌発症予防効果の可能性が報告されてはいます。しかし、十分に解明されているわけではなく、また、生活文化そのものを改めることは現実的には難しいと考えられます。
前立腺癌を予防する薬剤も確立はしていません。
前立腺癌を予防する薬剤も確立はしていません。